不毛地帯

デブ ブス 無職 の三重苦アラサー日記

【絵画】鴨居玲と恩師の想い出

皆様は『鴨居玲1928年2月3日 - 1985年9月7日』という画家はご存じでしょうか。
鴨居玲石川県出身のちょっと日本人離れした独特な画風の画家です。

▲死の半年前に描かれた鴨居玲の自画像

 

元々大学では油絵を学んでいたこともあり、洋画家には明るいほうだとは思っていますが、その中でも指折りで好きな作家の鴨居玲

しかしながらあまり関東の美術館に所蔵作品がないせいか、たまたま母校の美大の
展示でやっていた『蜘蛛の糸』という1枚しか実物を拝見したことが無かったのですが、没後30周年と北陸新幹線の開通記念ということで回顧展が開催せれるとのことで、現在東京ステーションギャラリー - TOKYO STATION GALLERY -で7/20まで開催中の『没後30年 鴨居玲展 踊り候え』に行ってきました。

 

ここから少しだけ鴨居玲に関する想い出話を書かせてください。
私がこの画家の存在を知ったのが恩師が影響の受けた画家として
挙げていたことがきっかけでした。


この恩師の作品も素晴らしくて大学卒業後、まだまた画家への
夢を諦められなかった私は態々氏が講師を勤める
カルチャースクールに出入りしておりました。
美大を出ておいて態々カルチャースクールに通うっていうのも可笑しな話ですが
家庭の事情で大学院への進学を断念した矢先、まだまだ絵を学びたいという
気持ちが強く、今思い出すと若かったなぁと思いますがそれほど
恩師の元で教鞭を賜りたかったのです。

 

恩師の作品にも『鴨居玲』の影響はタッチや作風などに色濃くみられ、
直接氏の口から鴨居玲の話を聞く機会はなかったのですが
氏の中でも存在の大きな画家であることは間違いないと思います。

結局平日開催のカルチャースクールでしたので
シフト制の仕事を辞めてからは足が遠ざかり、私もすっかり
油絵を描く機会は減ってしまいましたが
鴨居玲の絵を見ると恩師のことを思い出すのです。

あ、こんな描き方をしましたが恩師はまだまだご健在です。
恩師は私のことなぞ忘れてしまわれたでしょうが
また展示があれば足を運びたいな…と。

 

前書きが長くなってしまいましたが肝心の展示ですが
回顧展ということで学生時代の作品から絶筆まで
網羅したかなり見応えのある展示でした。

こういう回顧展だと学生時代の作品から
うますぎて絶望するなんてことがよくありますが、
鴨居氏の作品に関しては大器晩成型だった(41歳で画壇デビュー)せいか
学生時代の作風は発展途上というか、拙さが垣間見えちょっとだけ
親近感を覚えました。
(とはいえば私の学生時代の作品も酷いもんですが…)

 

氏の作品は手数はさほど多くはないと察しますが
そのメリハリのしっかりしたタッチから絶妙な表情を
描き出すのは流石といいますか、唯一無二の作風だなと。
その描写力のお陰かデフォルメがきいているにもかかわらず
内面を引き出すようなリアリティを感じます。

 

そいえば晩年の大作『1982年 私』に描かれている人物って
今までの作品として描いてきた人物たちなんですね
まとめて作品をみてお恥ずかしながら初めて気が付きました…

 

氏の作品には「道化師」がモチーフのものも多くみられるのですが
そうえば先ほど触れた恩師のちょっとおもしろいエピソードで
恩師の母親を道化師メイクで描いた絵をプレゼントしたそうなんです。
さぞ母親は喜んでくれるだろうと恩師は思ったそうですが
届いた絵をみて恩師の母親は激怒「親を笑いもの(道化師)にするとは
何事だ!」と電話がかかってきたそうです。
恩師も普通に肖像画を描けばよかったのに…。
(本人は笑いながら語っていましたが)


話がまた脱線してしまいましたが鴨居玲の晩年は持病に苦しみ
何度も自殺未遂の後自殺。
絶筆は襖に描かれた首を釣る男と苦しむ自画像だったそうです。
(その絶筆の展示はなかったですが…)
氏の作品から内面の苦しみはにじみ出ていたような気もしてくるので
そのエピソードを頭におきつつ、作品群をみているとなんだか切なさすら感じます。

こういう鴨居玲のエピソードもあるせいか影響を受けている恩師も
暗い絵ばかり描いているとそのうち精神病んで死ぬぞと
画壇連中に脅されていたようですが本人は
「いやー僕はほんと楽しくてしょうがなくて絵を描いてるから死ぬとか
言われても困るんだよね~~~」と笑いながらいっておりました。

 

画風と人柄は必ずしもイコールではないという象徴的なエピソードです。

鴨居玲というかそれに被せた恩師の話になってしまいまいたが
今回の展示そんなエピソードも思い出しつつとてもいい展示でした。
ご興味のある方は会期も僅かですが是非ご覧いただければと。

また久しぶりに油も描きたいなーと。
毎年コンペとか展覧会に出品しようかと思いつつ
全然実行できていないのという駄目っぷり…
あの頃の情熱はどこへ…